Ryo Sasagawa's Blog

笹川諒/「短歌人」所属/「西瓜」「ぱんたれい」同人

2018-01-01から1年間の記事一覧

『MITASASA』第1号、相互評

歌集『もうちょっと生きる』の三田三郎さんと発行したネットプリント『MITASASA』第1号、思っていたよりもはるかに多くの方々にお読みいただき、大変嬉しく思っております。配信も今週日曜日までとなりましたので、三田さんとの相互評をこのブログで公開しま…

ネプリ『MITASASA』第1号

歌集『もうちょっと生きる』の三田三郎さんと、ネットプリント『MITASASA』を作りました。 ・三田三郎「ワンダフルライフ」10首 ・笹川諒「天馬、あるいは」10首 を収録しています。お読みいただけますと幸いです。 セブンイレブン→予約番号G6HZ4J6Y(12月16…

12月1日の日記

今日は朝から天王寺で用事。駅の改札を出る瞬間に、石松佳さんの「花野へと、そして花野へ逃げてゆくきみは回転扉の向こう」(『毎日歌壇』2017年8月21日掲載)という短歌がふいに頭をよぎった。好きだなと思っていながら、歌意が取りきれない部分もあった歌…

『短歌人』2018年12月号の、好きな歌10首(会員欄)

秋という祈りの中に紫木蓮はぐれて一枝間の抜けた空(高良俊礼) 毎晩の眠りが日々の趣味となり安らぎゆくは死の練習か(いばひでき) ひまわりじゃなかったダンデライオンのたてがみしわがれはててもう、秋(鈴木杏龍) 甥っ子が庭でバットを振っている何か…

ネットプリントのお知らせ

水沼朔太郎さんのネットプリントに、「手に花を持てば喝采」10首が載っています。お読みいただけますと幸いです。以下詳細です。 ネプリ・トライアングル(シーズン3)第一回 セブンイレブン:83728225 ファミマやローソンなど:JMPN7A3TQ8 短歌連作十首×三…

<一首評>服部真里子さんの短歌より

雪柳てのひらに散るさみしさよ十の位から一借りてくる(服部真里子) 第二歌集『遠くの敵や硝子を』(書肆侃侃房、2018年)より。雪柳は、春に小さな白い花を咲かせるバラ科の植物である。また、下句の「十の位から一借りてくる」というのは、小学校で習った…

自選三十首

繁茂するイルミネーション 僕たちはカタカナの水草で寄り添う 寒くなることを確かさだと数え指一つ折り三叉路をゆく (サンサーラ)草笛として(サンサーラ)夜の砂漠を這う風として 奥歯から磨いて犬歯で現れる猫がケーキを食べた思い出 一時間九百円で働け…

『短歌人』2018年11月号の、好きな歌10首(会員欄)

つぎつぎと割れゆくせんたくばさみさすひのひざしれきしとは石と灰(鈴木杏龍) コーヒーの水面は揺れてその底にかがやく闇があり更に雨(高良俊礼) 三年間一度たりとも使わずに埃をかぶる穴あけパンチ(上村駿介) 角を曲がります、と心につぶやいて角曲が…

『短歌人』2018年10月号の、好きな歌10首(会員欄)

少年が光線(ひかり)の中をよぎり来てわれにものいう双腕を垂り(北岡晃) ひまわりの背丈こえたらあとはもう、ただ、もう、ひとりびとりの道途(鈴木杏龍) 出身を聞けば「火星」と真剣に答えるような男の寝顔(鈴掛真) 満ちてゆく今朝の木漏れ日葉脈を巡…

三田三郎『もうちょっと生きる』

昨日葉ね文庫でお会いした、三田三郎さんの第一歌集『もうちょっと生きる』を読んだ。 ・1日を2万で買ってくれるなら余生を売ってはいさようなら 結句の「はいさようなら」に驚く。余生を一日二万円で売って、そのお金を何かに使おうという訳ではなく、た…

川本浩美『起伏と遠景』

かつて「短歌人」に所属されていた川本浩美さんの遺歌集、『起伏と遠景』を読んだ。あとがきによると、現在僕がお世話になっている関西歌会の中心的なメンバーでもあったとのことである。歌集全体に独特の寂寥感が漂っていて、大阪の街や自分自身に関する事…

イェイツの詩集より

イェイツの詩集をぱらぱらと読んでいて、印象的な一連があったので備忘録として(日本語訳は自信ないですが笑)。それにしても、台風があまりに激しいので窓が割れないか心配。。 W.B.Yeatsの"Among School Children"より第8連(最終連)。 Labour is blosso…

『短歌人』2018年9月号の、好きな歌10首(会員欄)

だれもが舌をうまく収めてくちびるを閉じている はつなつのバス停(鈴木杏龍) とうめいな千の小鬼が駆け抜けた青田よこはれた今日の前触れ(岡本はな) 慰めは言わなくていい絵葉書のマトリョーシカになみだを描く(たかだ牛道) 偶然が重なっていく 低速で…

『短歌人』2018年8月号の、好きな歌10首(会員欄)

ろくがつのいきのしやすい肺胞をきしませて 誰 まっていたのは(鈴木杏龍) 前後左右を白きタイルに囲まれてわれの思考は四角くなりぬ(太田青磁) 炊飯器の予約ボタンが点りおりいいかもしれぬ独りっきりは(小原祥子) これの世の父のかぶりしソフト帽ひそ…

岩尾淳子『岸』

岩尾淳子さんの第二歌集『岸』を読んだ。神戸の海岸沿いの風景や、実生活を詠んだ歌をベースにしながらも、繊細で詩的な表現にたびたびはっとさせられ、作者のバランス感覚の良さのようなものを感じつつ読み進んだ。 ・帆をたたむように日暮れの教室に残され…

『短歌人』2018年20代・30代会員競詠から好きな歌

手をつなぎゆつくり進む子とふたり紋白蝶に追ひ越されをり(桃生苑子) 考えの差し出し方のうつくしいあなたの真似で五月を抜ける(相田奈緒) 犬をイヌ用キャリーで運ぶ人がいていつもより強くつり革を持つ(浪江まき子) 乳酸菌一億個 個? 個だそうです …

兵庫ユカ『七月の心臓』

兵庫ユカさんの短歌は『桜前線開架宣言』で印象に残っていて、いつか読みたいなと思っていた。先日ふと歌集の入手方法を調べてみると、販売は終了、国内でも所蔵している図書館が一館しかない(国立国会図書館にもない)という状況だったので、急いで地元の…

近藤かすみ『雲ケ畑まで』

「短歌人」の関西歌会でもお世話になっている、近藤かすみさんの『雲ケ畑まで』を読んだ。 今日はとてつもなく暑い日だったけれど、読んでいると気持ちが涼しくなるような、背筋がシュッとするような、そんな一冊だった。以下、特に好きな歌について。 ・忘…

安井高志『サトゥルヌス菓子店』

著者の安井高志さんは「浮島」という筆名で、twitterや『無責任』というWeb上の詩歌誌等で短歌を発表されていたとのこと。そして、その安井さんは昨年4月に急逝されており、この歌集は遺歌集ということになる。僕はこの歌集の情報をtwitterで知るまで、安井…

『短歌人』2018年7月号の、好きな歌10首(会員欄)

今朝ひとつ覚悟のようなかなしみが風に揺れたりテッポウユリよ(高良俊礼) 降る音が雨と気づけり薄闇の小さき神社に我が耳ふたつ(古賀大介) あゆみよることですか はい。がいじんの配るカレーのビラも受け取る(鈴木杏龍) 忘れずにいてほしいのは約束じ…

『うたつかい』29号から、好きな歌10首

宇宙人を殺めるような勢いが大事なのです採点業務は(牛隆佑) 親知らず抜かれし痕を舌先になぞれば壊れてゆく鰯雲(太田宣子) 君の名を呼ぶのをやめてしあわせと似ている場所で暮らしています(きつね) 春よりも苦手になつたひとに買ふやはらかくないはう…

小佐野彈『メタリック』

巻末の野口あや子さんの解説に「異色の経歴に見落とされがちな、この折り目正しい定型観とたしかな描写は、おそらくここ数年の若手歌人にはなかったものだ。作歌意識はむしろ古典的と言える」とある。これはまさにその通りで、ここ最近歌集をあまり読めてい…

佐藤弓生『世界が海におおわれるまで』

佐藤弓生さんの第一歌集を読んだ。これまでの経験上、歌集なら第一歌集、小説ならデビュー作が結局一番好き、という作家さんが多かったけれど、佐藤さんの場合、第一、第二、第三歌集と重ねるにつれて、表現の幅が広がり、詩的深度も増しているし、何よりも…

『短歌人』2018年6月号の、好きな歌10首(会員欄)

異国では誰かがひとり涙する君がくしゃみをひとつするとき(鈴掛真) 鈍感になればなるほど浮いているような心地のカフェテリア内(小玉春歌) 見えているもののすくなさ 卓上の春雨炒めぎらぎらし過ぎ(相田奈緒) 戸口にて夢見るやうに取り落とす。鍵に映…

佐藤弓生『薄い街』

『眼鏡屋は夕ぐれのため』に引き続き(佐藤弓生『眼鏡屋は夕ぐれのため』 - Ryo Sasagawa's Blog)、『薄い街』を読みました。最近は現代詩と短歌の境界について考えていたりするのですが、佐藤弓生さんはちょうどその境界の領域にいる歌人の一人だろうとい…

『うたつかい』30号から、好きな歌10首

今回からPDF版ができた『うたつかい』。スマホで読んだり、結局印刷して紙でも読んだりして、楽しみました。その中から、特に好きな歌を10首。 毒を持つ花の切手のうらがはを疑ひもせずきみは舐めたり(有村桔梗) 女子大に通っていたい女子大は森だからつく…

千原こはぎ『ちるとしふと』

歌集の装丁が良い!と思って、Amazonでポチりました。表紙だけでなく、歌集の中にも短歌にちなんだたくさんのイラストが描かれていて、素敵な歌集でした。以下、特に好きな歌の感想です。 ・おかえりと言う人のない毎日にまたひとつ増えてしまうぺんぎん 一…

ナイス害『フラッシュバックに勝つる』

私家版の歌集を購入したのは、宇野なずきさんの『最初からやり直してください』に続き、二冊目。twitterに流れてきたナイス害さんの短歌が面白くて、もっと読んでみたいと思い購入しました。跋文で雪舟えまさんが「すべて読み終えたあとにはナイス害ワールド…

瀬戸夏子『かわいい海とかわいくない海 end.』

最近、瀬戸夏子さんの短歌が気になっている。瀬戸さんの短歌の一般的なイメージを一言で言うなら、「とにかくわからない短歌」なのではないだろうか。僕自身も第一歌集『そのなかに心臓をつくって住みなさい』、第二歌集『かわいい海とかわいくない海 end.』…

『短歌人』2018年5月号の、好きな歌10首(会員欄)

飲食は娯楽にあらずひとの子も なまごみしるがくろきすじひく(鈴木杏龍) 水を盛る器としての手の窪みふたつ合わせて顔洗いおり(たかだ牛道) 朝が来て帰ってしまうのがいやでワイシャツのボタンを取った 全部(古賀たかえ) 有限の私の中にまたひとつ新規…