Ryo Sasagawa's Blog

笹川諒/「短歌人」所属/「西瓜」「ぱんたれい」同人

2018-01-01から1年間の記事一覧

<一首評>初谷むいさんの短歌より

エスカレーター、えすかと略しどこまでも えすか、あなたの夜をおもうよ /初谷むい『花は泡、そこにいたって会いたいよ』 ちょっとした遊び心で、エスカレーターを「えすか」と略して呼ぶ。でもそれは二人だけにしか通じない特別な呼び方。長い「えすか」を…

佐藤弓生『眼鏡屋は夕ぐれのため』

佐藤弓生さんの歌集を読むのは、『モーヴ色のあめふる』以来、二冊目。色々ときっかけがあって(twitterでの佐藤さんのツイートに感銘を受けた、最近現代詩への興味が更に増した、等)、佐藤弓生ワールド再チャレンジ、といった感じです。付箋を貼りまくりな…

瀬戸夏子『そのなかに心臓をつくって住みなさい』

みずうみに出口入口、心臓はみえない目だからありがとう未来/瀬戸夏子 中学生の時、英語の授業で、好きな色を紙に英語で書いて、自分と好きな色が同じ人を探してペアになるというゲームがあった。僕は普通にwhiteと書いたのだけれど、whiteの人が全然見つか…

『短歌人』2018年4月号の、好きな歌10首(会員欄)

病院の待合おほかた診察を終へてわれのみわが犬待てり(伊地知順一) 今朝の雨ほそく光りて花に降る君も私を通り過ぎたり(高良俊礼) にんげんがいない よ みちにめがね屋のナイロン製のはたのはためき(鈴木杏龍) 熱湯がシンクを鳴らし焼いてないのに焼き…

水について

先日、短歌関係の友人と話していて、「短歌によく登場させる言葉とかモチーフって何?」という話になった。僕が普段から短歌を作ることに対して、あまり能動的じゃない(紙やPCに向かって、さあ今から短歌を作るぞ、ということはほとんどない。残念ながら、…

萩原慎一郎『滑走路』

萩原慎一郎さんの『滑走路』。年始に一回読んだのだけれど、先日、新聞記事(朝日新聞2018年2月19日夕刊10頁) に、この歌集が取り上げられているのを読んで、改めて読み直した。新聞記事には作者の死因が自死であることがはっきりと書かれており(歌集には…

本多真弓『猫は踏まずに』

本多真弓さんの『猫は踏まずに』を読みました。まず、本の装丁がすごく素敵で、千種創一さんの『砂丘律』を読んだときも思ったけれど、これからは歌集の装丁にも書き手の個性がどんどん表現されるようになってくるのかなと思いました。表紙をめくると、遊び…

3月8日の日記

何てことのない一日だったけれど、頭の中でずっとジブリの主題歌が流れている。本当に何かが終わるときはこんな感じに終わるんじゃないかと、すこし不安になる。中学や高校の頃に一つ上の先輩が、一年というはるかな時間の、その分の高みにいた、その感じが…

石井僚一『死ぬほど好きだから死なねーよ』

石井僚一さんの『死ぬほど好きだから死なねーよ』を読みました。この歌集はまるでカメレオンのように、様々な角度から色々な修辞を駆使した歌を提示してくるのだけれど、歌集の一番最後の歌にもあるように、最終的には「らぶ」を志向した上での、紆余曲折の…

『短歌人』2018年3月号の、好きな歌10首

武器と楽器 枝分かれしてそれぞれに求めてゆけり逢ふべきひとを(阿部久美) 春寒の排水溝にはあかぐろき薔薇のはなびらみずに動けり(内山晶太) やむきみとしりつつ断てばそれきりの冬椿 はるはやくこないか(鈴木杏龍) 金魚たちこつりこつりと喉の奥にあ…

宇野なずき『最初からやり直してください』

宇野なずきさんの歌集『最初からやり直してください』を読みました。twitterでたまたま、宇野さんの<誰ひとりきみの代わりはいないけど上位互換が出回っている>を読んで、もっと他の短歌も読んでみたいと思ったのがきっかけでした。 ・貝殻がなくても貝の…

松野志保『Too Young To Die』

松野志保さんの第二歌集『Too Young To Die』。滋賀県立図書館から、地元の図書館に取り寄せてもらいました。「二人の青年の物語」というモチーフが、時代やシチュエーションを異にしながらひたすら変奏されてゆく歌集。僕が今回この歌集を読みたいと思った…

短歌における図書館活用法①

こんばんは、笹川です。今日は「短歌における図書館活用法①」ということで、お近くの公共図書館を活用して、絶版等で入手困難な歌集を無料でどんどん読む方法をご紹介します。東京都心にお住まいの方は、国立国会図書館の東京本館に行けばたいていの歌集は読…

法橋ひらく『それはとても速くて永い』

先日、批評会も開催された、法橋ひらくさんの歌集『それはとても速くて永い』。好きな歌のいくつかについて、書きます。 ・生きるのはたぶんいいこと願いごと地層のように重ねてゆけば 「地層のように」という表現が、深い。地層は長い年月を経て、自然に形…

伊波真人『ナイトフライト』

今日は伊波真人さんの『ナイトフライト』を読みました。お正月に実家から京都に戻る新幹線の中で読んで以来、二回目。 ・改札で遅延放送きいているスピーカーのある位置を見上げて 遅延放送が流れると、みんなスピーカーのある方を見上げる。私たちが夜空の…

<一首評>杜崎アオさんの短歌より

すうべにあすべての川を渡りゆく記憶のひとつひとつに黄砂 (杜崎アオ) 『うたつかい』29号(2017年9月発行)掲載の一首。一読してすぐに意味がとれるタイプの歌ではないし、歌の意味を詳細に解釈しようとする読み手の姿勢さえも、この歌にはあまりふさわし…

鈴掛真さんの「海より深い」を読む

今日は『短歌研究』の2018年2月号、特集「あたらしい相聞歌をさがして」に掲載されている、鈴掛真さんの連作「海より深い」を紹介します。 鈴掛さんの短歌は、 会うよりも会わないままでいるほうが好きになるのはどうしてだろう 小説のいちばん始めの会話文…

『短歌人』2018年2月号の、好きな歌8首

万華鏡ひとつ廻してあざやかな藍のうらがは過去となしたり (三島麻亜子) 祈る人はやがて小さな石になりその石をまた祈る人あり (古賀大介) なぜだろう昨日と似すぎている今日 時間感覚分からなくなる (上村駿介) いつからかきみ棲みたればわが胸の内た…

<一首評>法橋ひらくさんの短歌より

猫のいる団地のなかを突っ切って帰る 違うわ、米買うんだわ (法橋ひらく) この歌は先日、早稲田大学戸山キャンパスで行われた、法橋さんの歌集『それはとても速くて永い』の批評会で配布された記念冊子に、新作「アパート」13首として掲載されていた中の一…

<一首評>『短歌人』2016年5月号掲載分

濯ぎ物に冬の日の差すひるつかた泣きたいやうな無音がみつる (小島熱子) 洗濯や他の家事などの午前中の作業を終え、ふと窓の外に干した洗濯物を見遣る、という場面だろう。冬の弱い日差しが、真っ白な洗濯物を通すことではっきりと可視化される。それと同…

<一首評>服部真里子さんの短歌より

行くあてはないよあなたの手をとって夜更けの浄水場を思えり (服部真里子) 歌集『行け広野へと』収録。父親が一つの大きなモチーフである一連、「行け広野へと」の中の一首だが、ここでの「あなた」は父親ではなく、作中主体の恋人、もしくはそれに準ずる…

<一首評>大森静佳さんの短歌より

これでいい 港に白い舟くずれ誰かがわたしになる秋の朝 (大森静佳) 歌集『てのひらを燃やす』に収録された一首。「秋とあなたのゆびへ」というタイトルの連作の中の一首目の歌で、同じ連作中には他にも、<つばさ、と言って仰ぐたび空は傾いてあなたもいつ…

自選十首

ブログの初期設定がとても難しいです…。 プロフィールだけでは何のこっちゃだと思うので、自選十首をとりあえず考えてみました。 かなしみはかけら かけらの僕たちは小箱をひとつ互いに渡す 優しさは傷つきやすさでもあると気付いて、ずっと水の聖歌隊 自分…

自己紹介

こんにちは、笹川諒です。 短歌をやっていて、「短歌人」に所属しています。 <主な短歌歴> 2014年より「短歌人」会員。 髙瀬賞(「短歌人」の新人賞)で次席が二回(第14回「草笛」、第16回「その島へ」)。 「石のいくつか」で、第58回短歌研究新人賞最終…