歌集の装丁が良い!と思って、Amazonでポチりました。表紙だけでなく、歌集の中にも短歌にちなんだたくさんのイラストが描かれていて、素敵な歌集でした。以下、特に好きな歌の感想です。
・おかえりと言う人のない毎日にまたひとつ増えてしまうぺんぎん
一人暮らしの寂しさを紛らわすために、ペンギンのグッズを次々買ってしまう。もしかしたら、ノートや手帳の隅にペンギンのイラストが増えていく、ということかも。まあそれはともかく、歌集のこの歌が載っているページにはペンギンのイラストが載っていてかわいい。このペンギンはちゃっかり(?)表紙にもいる。
・すべてから置き去りにされているような心地してたぶんありふれている
感情があふれ出すような場面でも、どこか客観的というか、冷静さを失わないのが千原さんの歌の魅力なような気がする。<すきすぎてきらいになるとかありますかそれはやっぱりすきなのですか>の歌とかもそういう視座から詠まれた歌だなと思う。
・オシャレ女子のヘアアレンジを描きながら寝起きのままだ髪も素肌も
イラストレーターさんの素顔ってこんな感じなのか、と思う。この歌以外にもイラストやデザインのお仕事を詠んだ短歌が色々あって、今まで見たことのなかった世界が垣間見えた。
・友人の個展のはがき アーティストではないことをまた嚙み締める
こういう少しネガティブな感情も素直に歌にできる人はすごいと思う。読者としては信頼して読み進められるし、きっと作者にとって短歌は人生においてなくてはならないものなのだろうな、と思った。
・冬深くやわらかに強いられているこの日常は選択の果て
「やわらかに強いられている」が、確かにそんな感じだなと思う。どれだけ自分では良かれと思った選択を重ねて、ある程度は望んだ日常を手に入れたとしても、全てが思い通りにいくことなんてないのだから。