Ryo Sasagawa's Blog

笹川諒/「短歌人」所属/「西瓜」「ぱんたれい」同人

『水の聖歌隊』以降の歌、とりあえず20首

『水の聖歌隊』以降の歌、とりあえず20首   笹川諒

 

青白く月はこぼれて神職を選んだユリスモールのその後

 

リョウちゃん、と渚カヲルの声で聞くさらば全てのエヴァンゲリオン

 

とうめいな野原にとうめいな野原を 痛むのは縫い合わすときだけ

 

祈りつつ言葉を探すということが車のようでその車中泊

 

夏が気高くありますように 本棚をタオルケットで覆う日さえも

 

月曜には月曜の姉がいることを昼、そして夜の日記に記す

 

ブルー・キュラソーの空き瓶 命よりきれいなものをまだ見足りない

 

あなたの詩は最後にいつもお辞儀する そこから真似をしたいと思う

 

いつだって造語のようなすずしさで秋は来るのださびしくはない

 

鏡文字の柄のパジャマを着たいけど検索しても売ってなかった

 

そして詩の中には光る犬がいてその前と後ろの二千年

 

レシーブで上げたボールが冬の昼の月に変わって落ちて、目覚める

 

小品と呼ぶべき午後にアーモンドチョコを食べつつ言う「そのとおり」

 

やわらかな冬のひかりよ日時計に一人称があればうれしい

 

ゆったりと時間をなぞるたまかぎるほのかに赤い猫を眠らせ

 

罪滅ぼしのためにコップを食べるという習慣が夢の中ではあった

 

少年は俯いたままこの土地の伏せられた名前のようだった

 

空自身が壊れぬように空がまだ試さずにいる一色のこと

 

春はなおさらあなたの中に教会が二つ見えその小さめの方

 

行きたくて 海と砂漠と珈琲ゼリーの区別がどんどんなくなる旅へ