『水の聖歌隊』以降の歌、とりあえず20首 笹川諒
青白く月はこぼれて神職を選んだユリスモールのその後
リョウちゃん、と渚カヲルの声で聞くさらば全てのエヴァンゲリオン
とうめいな野原にとうめいな野原を 痛むのは縫い合わすときだけ
祈りつつ言葉を探すということが車のようでその車中泊
夏が気高くありますように 本棚をタオルケットで覆う日さえも
月曜には月曜の姉がいることを昼、そして夜の日記に記す
ブルー・キュラソーの空き瓶 命よりきれいなものをまだ見足りない
あなたの詩は最後にいつもお辞儀する そこから真似をしたいと思う
いつだって造語のようなすずしさで秋は来るのださびしくはない
鏡文字の柄のパジャマを着たいけど検索しても売ってなかった
そして詩の中には光る犬がいてその前と後ろの二千年
レシーブで上げたボールが冬の昼の月に変わって落ちて、目覚める
小品と呼ぶべき午後にアーモンドチョコを食べつつ言う「そのとおり」
やわらかな冬のひかりよ日時計に一人称があればうれしい
ゆったりと時間をなぞるたまかぎるほのかに赤い猫を眠らせ
罪滅ぼしのためにコップを食べるという習慣が夢の中ではあった
少年は俯いたままこの土地の伏せられた名前のようだった
空自身が壊れぬように空がまだ試さずにいる一色のこと
春はなおさらあなたの中に教会が二つ見えその小さめの方
行きたくて 海と砂漠と珈琲ゼリーの区別がどんどんなくなる旅へ