飲食は娯楽にあらずひとの子も なまごみしるがくろきすじひく(鈴木杏龍)
水を盛る器としての手の窪みふたつ合わせて顔洗いおり(たかだ牛道)
朝が来て帰ってしまうのがいやでワイシャツのボタンを取った 全部(古賀たかえ)
有限の私の中にまたひとつ新規作成してひらく湖(佐藤ゆうこ) ※湖=うみ
筋肉にあなたの心にじみ出てそれはどこにも記録されない(相田奈緒)
永遠に正しく笑う母がいる 家族写真は日に焼けていく(空山徹平)
うちの柿盗んでいったおばさんがおばさんのまま終わる平成(北城椿貴)
蟻地獄のように吸い込まれる百貨店 信号変われば終わり(加藤真弓)
上書き保存で消した歌稿を思い浮かべるピアニストのポーズ(国東杏蜜)
湯たんぽの湯は冷めてなお水でなく新しい朝に温みを残す(高橋道子)
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