Ryo Sasagawa's Blog

笹川諒/「短歌人」所属/短歌のことを書いていこうと思ってます。

歌集レビュー

大橋弘『used』

大橋弘さんの第二歌集『used』を読みました。普段短歌をやっていない人が読んでも面白く、短歌をガッツリやっている人にとっても新鮮な、素敵な歌集です。 イヤ。イヤですこんな逆さまの地上を叩く夏の陽射しは 夏の陽射しが暑い、イヤだ、と思っていたら、…

穂村弘『水中翼船炎上中』

穂村弘さんの四つ目の歌集となる『水中翼船炎上中』を、最近になってやっと読みました。以下、特に気になった歌とその感想です。 なんだろうときどきこれがやってくる互いの干支をたずねる時間 たとえば「どこの出身?」とか「血液型は?」といった質問であ…

冨樫由美子『草の栞』

「短歌人」の先輩、冨樫由美子さんの第一歌集『草の栞』を読みました。(探していたのですがなかなか手に入らず、短歌の友人から貸していただきました。) 同じかたちの若草色の扉(どあ)ならぶ白い廊下のゆめをまたみる 夢の情景の説明が、すでに絵画にな…

三田三郎『もうちょっと生きる』

昨日葉ね文庫でお会いした、三田三郎さんの第一歌集『もうちょっと生きる』を読んだ。 ・1日を2万で買ってくれるなら余生を売ってはいさようなら 結句の「はいさようなら」に驚く。余生を一日二万円で売って、そのお金を何かに使おうという訳ではなく、た…

川本浩美『起伏と遠景』

かつて「短歌人」に所属されていた川本浩美さんの遺歌集、『起伏と遠景』を読んだ。あとがきによると、現在僕がお世話になっている関西歌会の中心的なメンバーでもあったとのことである。歌集全体に独特の寂寥感が漂っていて、大阪の街や自分自身に関する事…

岩尾淳子『岸』

岩尾淳子さんの第二歌集『岸』を読んだ。神戸の海岸沿いの風景や、実生活を詠んだ歌をベースにしながらも、繊細で詩的な表現にたびたびはっとさせられ、作者のバランス感覚の良さのようなものを感じつつ読み進んだ。 ・帆をたたむように日暮れの教室に残され…

兵庫ユカ『七月の心臓』

兵庫ユカさんの短歌は『桜前線開架宣言』で印象に残っていて、いつか読みたいなと思っていた。先日ふと歌集の入手方法を調べてみると、販売は終了、国内でも所蔵している図書館が一館しかない(国立国会図書館にもない)という状況だったので、急いで地元の…

近藤かすみ『雲ケ畑まで』

「短歌人」の関西歌会でもお世話になっている、近藤かすみさんの『雲ケ畑まで』を読んだ。 今日はとてつもなく暑い日だったけれど、読んでいると気持ちが涼しくなるような、背筋がシュッとするような、そんな一冊だった。以下、特に好きな歌について。 ・忘…

安井高志『サトゥルヌス菓子店』

著者の安井高志さんは「浮島」という筆名で、twitterや『無責任』というWeb上の詩歌誌等で短歌を発表されていたとのこと。そして、その安井さんは昨年4月に急逝されており、この歌集は遺歌集ということになる。僕はこの歌集の情報をtwitterで知るまで、安井…

小佐野彈『メタリック』

巻末の野口あや子さんの解説に「異色の経歴に見落とされがちな、この折り目正しい定型観とたしかな描写は、おそらくここ数年の若手歌人にはなかったものだ。作歌意識はむしろ古典的と言える」とある。これはまさにその通りで、ここ最近歌集をあまり読めてい…

佐藤弓生『世界が海におおわれるまで』

佐藤弓生さんの第一歌集を読んだ。これまでの経験上、歌集なら第一歌集、小説ならデビュー作が結局一番好き、という作家さんが多かったけれど、佐藤さんの場合、第一、第二、第三歌集と重ねるにつれて、表現の幅が広がり、詩的深度も増しているし、何よりも…

佐藤弓生『薄い街』

『眼鏡屋は夕ぐれのため』に引き続き(佐藤弓生『眼鏡屋は夕ぐれのため』 - Ryo Sasagawa's Blog)、『薄い街』を読みました。最近は現代詩と短歌の境界について考えていたりするのですが、佐藤弓生さんはちょうどその境界の領域にいる歌人の一人だろうとい…

千原こはぎ『ちるとしふと』

歌集の装丁が良い!と思って、Amazonでポチりました。表紙だけでなく、歌集の中にも短歌にちなんだたくさんのイラストが描かれていて、素敵な歌集でした。以下、特に好きな歌の感想です。 ・おかえりと言う人のない毎日にまたひとつ増えてしまうぺんぎん 一…

ナイス害『フラッシュバックに勝つる』

私家版の歌集を購入したのは、宇野なずきさんの『最初からやり直してください』に続き、二冊目。twitterに流れてきたナイス害さんの短歌が面白くて、もっと読んでみたいと思い購入しました。跋文で雪舟えまさんが「すべて読み終えたあとにはナイス害ワールド…

瀬戸夏子『かわいい海とかわいくない海 end.』

最近、瀬戸夏子さんの短歌が気になっている。瀬戸さんの短歌の一般的なイメージを一言で言うなら、「とにかくわからない短歌」なのではないだろうか。僕自身も第一歌集『そのなかに心臓をつくって住みなさい』、第二歌集『かわいい海とかわいくない海 end.』…

佐藤弓生『眼鏡屋は夕ぐれのため』

佐藤弓生さんの歌集を読むのは、『モーヴ色のあめふる』以来、二冊目。色々ときっかけがあって(twitterでの佐藤さんのツイートに感銘を受けた、最近現代詩への興味が更に増した、等)、佐藤弓生ワールド再チャレンジ、といった感じです。付箋を貼りまくりな…

瀬戸夏子『そのなかに心臓をつくって住みなさい』

みずうみに出口入口、心臓はみえない目だからありがとう未来/瀬戸夏子 中学生の時、英語の授業で、好きな色を紙に英語で書いて、自分と好きな色が同じ人を探してペアになるというゲームがあった。僕は普通にwhiteと書いたのだけれど、whiteの人が全然見つか…

飯田有子『林檎貫通式』

『短歌タイムカプセル』(書肆侃侃房)で飯田有子さんの短歌を読んだのがきっかけで、歌集『林檎貫通式』を読みました。この歌集、Amazonでは販売中止になっていて、全国の図書館を探しても、国立国会図書館くらいにしか所蔵が見つからず、なかなかアクセス…

萩原慎一郎『滑走路』

萩原慎一郎さんの『滑走路』。年始に一回読んだのだけれど、先日、新聞記事(朝日新聞2018年2月19日夕刊10頁) に、この歌集が取り上げられているのを読んで、改めて読み直した。新聞記事には作者の死因が自死であることがはっきりと書かれており(歌集には…

本多真弓『猫は踏まずに』

本多真弓さんの『猫は踏まずに』を読みました。まず、本の装丁がすごく素敵で、千種創一さんの『砂丘律』を読んだときも思ったけれど、これからは歌集の装丁にも書き手の個性がどんどん表現されるようになってくるのかなと思いました。表紙をめくると、遊び…

石井僚一『死ぬほど好きだから死なねーよ』

石井僚一さんの『死ぬほど好きだから死なねーよ』を読みました。この歌集はまるでカメレオンのように、様々な角度から色々な修辞を駆使した歌を提示してくるのだけれど、歌集の一番最後の歌にもあるように、最終的には「らぶ」を志向した上での、紆余曲折の…

宇野なずき『最初からやり直してください』

宇野なずきさんの歌集『最初からやり直してください』を読みました。twitterでたまたま、宇野さんの<誰ひとりきみの代わりはいないけど上位互換が出回っている>を読んで、もっと他の短歌も読んでみたいと思ったのがきっかけでした。 ・貝殻がなくても貝の…

松野志保『Too Young To Die』

松野志保さんの歌集『Too Young To Die』。滋賀県立図書館から、地元の図書館に取り寄せてもらいました。おおざっぱに言うと、「二人の青年の物語」というモチーフが、時代やシチュエーションを異にしながらひたすら変奏されてゆく歌集、と言えるかもしれま…

法橋ひらく『それはとても速くて永い』

先日、批評会も開催された、法橋ひらくさんの歌集『それはとても速くて永い』。好きな歌のいくつかについて、書きます。 ・生きるのはたぶんいいこと願いごと地層のように重ねてゆけば 「地層のように」という表現が、深い。地層は長い年月を経て、自然に形…

伊波真人『ナイトフライト』

今日は伊波真人さんの『ナイトフライト』を読みました。お正月に実家から京都に戻る新幹線の中で読んで以来、二回目。 ・改札で遅延放送きいているスピーカーのある位置を見上げて 遅延放送が流れると、みんなスピーカーのある方を見上げる。私たちが夜空の…