武器と楽器 枝分かれしてそれぞれに求めてゆけり逢ふべきひとを(阿部久美)
春寒の排水溝にはあかぐろき薔薇のはなびらみずに動けり(内山晶太)
やむきみとしりつつ断てばそれきりの冬椿 はるはやくこないか(鈴木杏龍)
金魚たちこつりこつりと喉の奥にあるという歯と歯を噛み合わす(相田奈緒)
始発にもこんなに人が並ぶのか出て行く朝にこの街を知る(小笠原啓太)
理由って探せばことばになってしまう 脳には六つ葉があるという(空山徹平)
メルカリで「人の心」を検索す 四十件と出てきてびびる(松木秀)
冬を待つこころのままに落雁を齧ればすでに冬は来ていた(黒﨑聡美)
うつ病のはじまりなのか駄菓子屋の裏のポストがこんなに遠い(有朋さやか)
雪の日の雪の匂いよ淋しさはいつも一筋甘やかにあり(吉川真美)
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今月の『短歌人』から特に好きな歌10首です(もちろん全部の短歌が読めたわけではないのですが…)。
順番は短歌が掲載されているページ順になっています。
万一、誤字・脱字等ありましたら大変申し訳ございません。