てのひらをひらけばそこに窓がある 空がくずれてゆくのがみえる(千葉みずほ)
ビルを囲む鉄骨覆う防音カバー越しから空のそこだけを見る(浪江まき子)
弟がパンツ洗って干しているそれユニクロで買ったよ俺も(葉山健介)
楽しさに偏りのある一日を味がなくなるまで噛んでいた(相田奈緒)
捩じ伏せてねじ伏せられてこの夜のひとりひとりに浮くちからこぶ(朝倉洋)
いくつもの修羅場をこえてきたのだという顔をして猫のふりむく(有朋さやか)
言葉とは鋭いナイフになるけれど暗闇を照らす光にもなる(上村駿介)
甘えたい気持ちの中にお姉さんの表情をする二歳の娘(笠原宏美)
まちがえて通してしまったのではなく拙さの光り方がよかった(北城椿貴)
ほんとうにときどきカラオケボックスで歌わず絶叫してる日がある(古賀たかえ)
血管をじゅっと挟んでシールする綺麗にきまったお腹がすいた(佐々木あき)
迫りくる津波と感情絡み合い「早く、早く!」と叫び続けた(笹渕静香)
甘すぎて今に破れるクレープの緊張感で僕らは暮らす(鈴掛真)
連絡船うどん横目に改札をピピッと通るここが高松(庭鳥)
「今ついた」「今から向かう」と文字交わし博多のひとと過ごすみじか夜(松村翔太)
葬られいる烏いてYoutube指先でまた葬られたる(真中北辰)
子と同じくらゐの重さ抜かれたる車止め抱きかかへてみれば(桃生苑子)
飛行機やランドマークを指差したとき指先の汚れに気づく(山川創)
見上げると、空を渡ってゆくものが、あるいは川のわたしであった(鈴木秋馬)
朝顔が枕もとまで迫りきて夢と気づかずよろこぶ私(佐藤ゆうこ)
それぞれの作者の方の、特に好きな一首です!