旅人の目をして生きてゐることをまぶかにかぶる帽子に隠す(冨樫由美子)
抒情とは震えのことに他ならず触れて良いものと悪いものとの(高良俊礼)
若い子に道を譲れと言われて泣いた長い氷河期の終わりに(国東杏蜜)
吉田君ときけば私は一番に牛のあの仔を思い浮かべる(髙橋小径)
放課後の横断歩道のバレリーナ青信号が本当に青い(北城椿貴)
読めといふ声にのまれて見渡せばいづれ読むべきもののゆふだち(鈴木秋馬)
小さめの声で子どもに注意する多分明日は夢を見られる(山川創)
カーテンを少し開けおく夜の窓夜の深さを測る猫あり(山中もとひ)
何故犯人は北へむかふか考へた結果わたしも北へむかふ(いなだ豆乃助)
かばんには防犯ブザーをぶら下げているのいまだに世界がこわい(古賀たかえ)
※掲載ページ順です。万一誤字・脱字等ありましたら、すみません。