20代・30代会員競詠 8首 笹川諒
神に鬱きざして春のひとしれず青く塗られてゆくハーモニカ
自分の性格がわからない川沿いの桜に首を絞められながら
わたしがいちばん図形だったとき、梅田でも迷うことはなかった
少しだけ歴史を信じるのもいいね旅の終わりに余った顔で
秩序からはるか離れて歩みゆく永遠のエイプリル・キャットよ
ありうべきわたしのように夕陽が沈む/彼は教会のようにやさしい
絵にも音にもならない不穏のための一行 苦しくない選択だった
奇跡のトウ・シューズが見えるとてもふかい緑のような疲れの中に
(「短歌人」2022年8月号掲載)