Ryo Sasagawa's Blog

笹川諒/「短歌人」所属/「ぱんたれい」同人

『あみもの』第二十号を読む④

前回までの記事に引き続き、『あみもの』第二十号を読みます。

過去分のリンクも貼っておきます!

『あみもの』第二十号を読む① - Ryo Sasagawa's Blog

『あみもの』第二十号を読む② - Ryo Sasagawa's Blog

『あみもの』第二十号を読む③ - Ryo Sasagawa's Blog

 

人知れぬ心の闇があるならば街角のごみ箱の青色/加藤悠

 

ごみ箱やポリバケツは青色のものが多いけれど、なぜ青なのかということは考えたことがなかった。簡単にネットで調べてみた限りでは、素材そのものの色が青で、青という色が衛生的なイメージも持っているため、そのままその色が使われているのではないか、ということが書かれていた。青という色は希望をイメージさせる青空の色でもあるけれど、おそらく多くの人はなぜ街角のごみ箱が青なのかを考えたことはないだろう。たしかに、「人知れぬ心の闇」がそこには潜んでいそうな気がする。

 

ブラインドカーテン揺れる この部屋にあるのはもっと小さめの夏/津隈もるく

 

カーテンを揺らす風に、夏の気配を感じた主体。その瞬間、部屋の内側と外側で世界が分断されているかのような感覚を覚え、夏の爽やかな風が吹き渡る外の世界とは違い、この部屋には「もっと小さめの夏」があると感じる。「カーテン」とだけ書かずに「ブラインドカーテン」と書くことで、主体が自己を外的な世界から遮断したいと思っているかのような印象も立ち上がってくる。

 

僕たちの過ごす時間が完全な球体であると仮定してみる/まだまだ

 

「僕たち」が指しているのが、みんなのことなのか、特定の誰かとの二人のことなのか、で読みも変わってきそう。とはいえ、連作の二首目が<そういえば夜の魔物はいるんだし、明るい時間の君に会いたい。>という歌なので、二人で過ごす時間のことなのかなと思って読んだ。二人で過ごす時間を大事に思う感覚を言うのに、その時間が「完全な球体であると仮定してみる」というのが面白くて、「球体」という語から、天動説・地動説みたいな何やら大きなスケールの話を言っているような錯覚も読み手に与える。セカイ系っぽい雰囲気が魅力。

 

好きなことあるかと聞かれたらあんまり自信はないな臓物/小祝愛

 

意味も韻律も個性的な歌。最初は好きな「もの」を聞かれて「臓物」と答えているのかと思ったけれど(それでも十分やばい)、よく読むと好きな「こと」を聞かれているので、話がますます分からなくなってくる。読みの可能性の一つ目は、「臓物」それ自体から、「好きなことあるか」と問いかけられているという読み。二つ目は、やっぱり「好きなこと」=「臓物」で、臓物を使ってあれこれをすることが好き、という読み。三つ目は、「好きなことあるかと聞かれたらあんまり自信はないな」という心的状態が、主体の中でどこか「臓物」を想起させる部分があり、こころの天秤の上で心的状態と「臓物」が奇跡的に釣り合っているという読み。四つ目は、「好きなことあるかと聞かれたらあんまり自信はないな」、と主体が自身の体内の「臓物」に向かって語りかけているという読み。他にも解釈はあると思うけれど、とりあえずこのあたりで……。

 

びいどろをかざせば青く透き通る祖母の白髪もトウモロコシも/紺野なつ/鴨衣

 

作者にお二人の名前があったので、ひょっとして合作なのだろうかと思ってツイッターで検索してみたら、「二人で五首ずつの十首連作」とのことだった。これも『あみもの』だからこそできるコラボレーション。どの歌がどちらの作者の歌かは、後日発表とのこと。掲出歌は、青いビードロを通して見るとあらゆるものが青く見えるということなのだけれど、白い「祖母の白髪」はともかく、黄色い「トウモロコシ」まで青く見えてしまうというのが、良いなと思った。夏の空気が辺り一面に漂っているような印象。