手に花を持てば喝采 笹川諒
よくできたかなしみのよう雨止みを待つバス停で語るマティスは
音声が急に途切れる 耳鳴りの音はたまごっちが死ぬ音だ
きっと覚えておけると思うアラベスクいつか壊れてゆく体ごと
星きれい あなたは知らないだろうけどあれなら神々の自爆テロ
たとえば夜が生徒のように慎ましく麦茶を飲んでいる いや僕が
(海沿いを歩くシスター)それからを僕は幼い僕と歩いた
舟旅と思えば舟の詩が書けることだよ、いつも感謝するのは
手に花を持てば喝采(くれぐれもあなたの比喩が割れないように)
パラフィン紙分けあうように冬を待つこころに敵を置かない人と
歯を磨くたびにあなたを発つ夜汽車その一両を思うのでした
(「ネプリ・トライアングル(シーズン3)」第1回掲載)