Ryo Sasagawa's Blog

笹川諒/「短歌人」所属/短歌のことを書いていこうと思ってます。

『MITASASA』第2号、相互評

三田三郎さん、ゲストの大橋凜太郎さんと発行したネットプリント『MITASASA』第2号ですが、配信残り二日の時点で前回の1号の出力数をすでに上回っており、たくさんの方にお読みいただいているようです。本当に有難うございます!さて、今回の連作の中から、お互いに好きな歌を選び、相互評を書いてみました。よろしければこちらもご覧ください!

 

呼びたい、と思えばひかり。でもひかり(あなたが予期せずして持つ身体)/笹川諒

 

我々が何かを認識する際、その対象が何であっても結局は可視光線を捉えているにすぎない。科学で証明されていることがすべて虚構かもしれないという事をこの歌の中で主体は根拠の無いある種、天体的な直感のようなもので感受する。「予期せず」という言葉からは表裏ふたつの意味が読み取れるが私は白い光に足を踏み入れるようにこの歌を読みたい。恐らくこの歌の主体も自身が過去「ひかり」であったことをどこかで感受している。そんな「ひかり」同士であったふたりが「予期せず」身体を持つことで改めて出会ったのだ。さらに言うとすればこの歌の上手さは句読点や()表記を違和感なく使いこなしている点だろう。充分に休符をいれて読むことで万葉集由来の連歌のようにふたりの人物の声が聴こえてくる。<大橋>

 

あなたとは民事・刑事の双方で最高裁まで愛し合いたい/三田三郎

 

事務的な定型の文体かと思いきや、結句で「愛し合いたい」へ反転する。それだけならたまに見かけるタイプのレトリックだが、「民事・刑事の双方で最高裁まで」という表現から想起される時間・労力・問題の複雑さ、「最高」という字面、さらに言うと「民事・刑事」のストーリー喚起力(サスペンスドラマや「天城越え」のような演歌的ドロドロ感をイメージする)、といった小道具が巧みに機能し、主体は果たしてどのように愛し合いたいと思っているのだろうかという疑問を、読み手は際限なく考えてしまう。<笹川>

 

バケツいっぱいのひかりをきみの目の前ですべて零してもいいですか/大橋凜太郎

 

もったいないからやめなさい。と言えるのは私が歌の外部にいる第三者だからだ。こう尋ねられた「きみ」は、その問いかけが帯びている迫力に押され、おずおずと頷いているような気がする。作中主体がやろうとしている行為は、些かサディスティックな様相を呈しながらもその実、刹那的な蕩尽の快楽を二人だけで共有したいという、透明な愛の経験への強い憧れに動機づけられているのだ。<三田>