Ryo Sasagawa's Blog

笹川諒/「短歌人」所属/短歌のことを書いていこうと思ってます。

自選三十首

繁茂するイルミネーション 僕たちはカタカナの水草で寄り添う

 

寒くなることを確かさだと数え指一つ折り三叉路をゆく

 

サンサーラ)草笛として(サンサーラ)夜の砂漠を這う風として

 

奥歯から磨いて犬歯で現れる猫がケーキを食べた思い出

 

一時間九百円で働けば九百円にちぎれる世界

 

あなたよりあなたに近くいたいとき手に取ってみる石のいくつか

 

鯛焼きを君が食べてたその日から頭のどっかに鯛焼きの部屋

 

かなしみはかけら かけらの僕たちは小箱を一つ互いに渡す

 

喩としてのあなたはいつも雨なので距離感が少しくるう六月

 

これ以上乗ってこないで 乗客が目と目で唱和するわらべうた

 

大丈夫、かなしくたって内側はごくさい色の雪 きれいだよ

 

クリムトの絵画、メーテル、暗がりの杏子酒(ながれるよるはやさしい)

 

冷えた手の甲を重ねて僕たちは既視感の王国を出る舟

 

線香と春は親しいのだけれど美味しいパンを買いに行こうよ

 

自分から死ぬこともある生きものの一員として履く朝の靴

 

花冷えのミネストローネ いきること、ゆたかに生きること、どうですか

 

優しさは傷つきやすさでもあると気付いて、ずっと水の聖歌隊

 

耳の良い水たちばかりなのだろう春の終わりは雨、アルペジオ

 

良い大人にはなれなくて『椿姫』読みつつ凭れている冬の駅

 

くまモンのポーチを買った 人が人を産むことがとてもこわいと思う

 

町工場過ぎれば機器にあこがれて冬の陽ざしの透過器となる

 

性愛という文脈を外れずに朝日を浴びてそのモノレール

 

君が火に燃える体と知りながらひたすら赤いお守りを買う

 

感情を静かな島へ置けば降る小雨の中で 踊りませんか

 

フランス語学び始めてしばらくは君が繰り返したジュ・マペール

 

自画像のような夕日で思い出す世界の猫がいた百貨店

 

無題という題がどれだけ美しいことかを伝えたくて会いにゆく

 

ソ、レ、ラ、ミと弦をはじいてああいずれ死ぬのであればちゃんと生きたい

 

友達を家具に喩えてゆくときの家具には家具の哲学がある

 

夏の窓 磨いてゆけばゆくほどにあなたが閉じた世界があった

 

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自選三十首をまとめてみました。感想等いただけましたら幸いです。