だれもが舌をうまく収めてくちびるを閉じている はつなつのバス停(鈴木杏龍)
とうめいな千の小鬼が駆け抜けた青田よこはれた今日の前触れ(岡本はな)
慰めは言わなくていい絵葉書のマトリョーシカになみだを描く(たかだ牛道)
偶然が重なっていく 低速で縁石に乗り上げるタクシー(相田奈緒)
りゅうたってよばれた君は戦地にいるかのごとく帽子が似合っているよ(佐々木紬)
メモを手にたった一人を探すとき港の匂いで満ちる空港(佐藤ゆうこ)
傘はある(秋田は自殺率一位)わたしには傘はある傘はある(冨樫由美子)
『ユルスナールの靴』を片手に歩きます歩いても人ばかりの街を(葉山健介)
いい方の魔女から届くパンプキン・パイの匂ひが猫を惑はす(いなだ豆乃助)
ATMの画面を拭くのは警備員ぞうきんいちまいを握りしめて(古賀たかえ)
※掲載ページ順です。万一誤字・脱字等ありましたら、すみません。