ろくがつのいきのしやすい肺胞をきしませて 誰 まっていたのは(鈴木杏龍)
前後左右を白きタイルに囲まれてわれの思考は四角くなりぬ(太田青磁)
炊飯器の予約ボタンが点りおりいいかもしれぬ独りっきりは(小原祥子)
これの世の父のかぶりしソフト帽ひそやかにあり通夜の部屋隅(岡本はな)
ゆっくりと過去の景色に染まりゆく意識よ海の向こうも夏か(高良俊礼)
雨の日は静かに家にをるものと母は応へぬ傘なきを問へば(たかだ牛道)
かふかふとふやけた笑いまだ軽い名刺入れが手に収まっている(金子りさ)
助けてと言うにも力が要るんだよ とび色の目で友はつぶやく(空山徹平)
悲しみがいくつか心に湧きはじめそれに見合った思い出を呼ぶ(千葉みずほ)
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