今朝ひとつ覚悟のようなかなしみが風に揺れたりテッポウユリよ(高良俊礼)
降る音が雨と気づけり薄闇の小さき神社に我が耳ふたつ(古賀大介)
あゆみよることですか はい。がいじんの配るカレーのビラも受け取る(鈴木杏龍)
忘れずにいてほしいのは約束じゃなくて今夜が雨だったこと(鈴掛真)
まるでパウル=クレーのような春の水 いつか溺れてしまう夕暮れ(千葉みずほ)
トーストにココナッツオイル垂らすときふいに不安は鳩尾をうつ(笠原真由美)
急用で、としか言えないシチュエーション この世にあったのでガストから走る(佐々木紬)
恒星が小屋に来てゐた。彼は声で、夜の広さを明らかにする。(鈴木秋馬)
母の句に私のことは出て来ない私は母を詠んでゐるのに(浅野月世)
木炭がこすったような雨の中ティースプーンがあつめるひかり(佐藤ゆうこ)
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