Ryo Sasagawa's Blog

笹川諒/「短歌人」所属/短歌のことを書いていこうと思ってます。

「石のいくつか」10首

石のいくつか   笹川諒

 

 

洗濯をするたび縮むポロシャツが朝日でかわいてゆくよ ハレルヤ

 

履歴書の写真切るときこんにちは 最後の一枚これが僕だよ

 

繋ぎとめてくれるあなたは引力で そうか僕には海の血がある

 

奥歯から磨いて犬歯で現れる猫がケーキを食べた思い出

 

イキロイキロイキロ 床屋の店先の赤/白/青はくるくる回る

 

もうすぐであなたにだってなれたのに 傘袋では水が私語する

 

一時間九百円で働けば九百円にちぎれる世界

 

映画館のポップコーンになるくらい軽く生きてもいいかと思う

 

七割は水でできます カップ麺汁まで飲んでわたしをうめる

 

あなたよりあなたに近くいたいとき手に取ってみる石のいくつか

 

 

※『短歌研究』2015年9月号より

 

 

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石井僚一さんがブログで評を書いていただいていたので、合わせて載せます。以下、石井さんの評です。

 

一時間九百円で働けば九百円にちぎれる世界

 

アルバイトでは「九百円」で「一時間」を切りとるようなことが当たり前に行われている。とてもわかりやすいやり方だから採用されているけれど、お金によって時間が切り取られるというのはなかなか暴力的な気がする。この歌はそれを「ちぎれる」という言葉で表現した点が素晴らしく素晴らしい。痛みを伴いながらじりじりと裂けていくような、無理やりに分けさせられているような、そういう感じが「ちぎれる」にはある。