今日は伊波真人さんの『ナイトフライト』を読みました。お正月に実家から京都に戻る新幹線の中で読んで以来、二回目。
・改札で遅延放送きいているスピーカーのある位置を見上げて
遅延放送が流れると、みんなスピーカーのある方を見上げる。私たちが夜空の星を見上げるのは、どうしてなのだろう。
・傘の柄のかたちの街灯つらねては雨の気配に満ちる国道
雨が降る前のペトリコールにとらわれる嗅覚。それが視覚にまで影響を及ぼし、眼前の風景を歪めているかのようだ。
・千年後日本であまた出土するイオンモールという名の遺跡
イオンモールって、確かにいびつな形をしている。千年後の日本史の図録に建物の内部の図とか載ってそう。ここがフードコートで、ここが映画館で…みたいに。
・白い家つらなり町はひろがって宛先のない葉書のようだ
閑静な住宅地が目に浮かぶ。「宛先のない葉書」は、切手欄や郵便番号を記入する欄が窓のよう、という視覚的なメタファーだけじゃなくて、郊外に立派なマイホームを構え、安定した人生を送っていればそれで良いのか、的な含意があるのかもしれない。
・水道は水からお湯になるときに音がくぐもる 生きているのか
他の歌もそうだけれど、無機物をすごく注意深く見ている人だな、と思った。
一首一首はもちろん、歌集全体の落ち着いた雰囲気が好きです。
またいつか、静かな夜の日に、読もうと思います。