Ryo Sasagawa's Blog

笹川諒/「短歌人」所属/短歌のことを書いていこうと思ってます。

「ジュ・マペール」18首

ジュ・マペール   笹川諒

 

 

ここからはきっと見えてる知らないし誰かに訊くこともないそのビル

 

誕生日近くに自死が多いという統計がある 君を含んで

 

腹筋をペアでやるとき触れていた足はたしかに熱を帯びてた 

 

住んでいた部屋はまだあるセックスを君が彼女としていたはずの

 

二人ともバレーが下手で割り勘で買ったボールで練習した日

 

いらんって言われてもらったマクドナルドのハッピーセットのおまけ かなしい

 

フランス語学び始めてしばらくは君が繰り返したジュ・マペール

 

たまに真似してみてるのはファミレスで一番高いやつ頼む癖

 

謝りたいことのひとつに使用済みあぶらとり紙拾わせたこと

 

もし過去に戻るとしたらあの夜に英詩の訳の課題はしない

 

「男二人同じベッドに寝るなんて普通ないよね」「うん、普通ない」

 

慰める術を多くは知らなくて長身の友の横でただ寝る

 

充電の残り四十四パーで心がぎゅっとなる ごくたまに

 

骨壺の色は青くて水棲のように生きていたい君だった

 

たぶん君が開かれたこと ずっと臓器提供欄に○ができない

 

口に出すことはもちろん心でも言えはしなくて(しかたなかった)

 

何らかの啓示のように図書館の書架で『トーマの心臓』を読む

 

メメント・モリと呼ぶには重く六月のSNSに咲く白い百合

 

 

※『短歌人』2017年11月号より。