Ryo Sasagawa's Blog

笹川諒/「短歌人」所属/短歌のことを書いていこうと思ってます。

「その島へ」15首

その島へ   笹川諒

 

 

良い大人にはなれなくて『椿姫』読みつつ凭れている冬の駅

 

絹ごし豆腐三つを提げて帰る道 奪うより多く与えられたら

 

光るもの掬いあげてはまた戻す人だ パクチーさらりと食べて

 

答えのない問いばかりあり這わせれば君は鼠径部から冷えている

 

水を帯びるものはくちびる この都市のいちばん痛むところを歩く

 

陶磁器の美術館では心臓のかたちにばかり人が集まる

 

全角で数字をうつと決めている人のメールはすこし優しい

 

噴水よ(人が言葉を選ぶときこぼれる言葉たち)泣かないで

 

くまモンのポーチを買った 人が人を産むことがとてもこわいと思う

 

町工場過ぎれば機器にあこがれて冬の陽ざしの透過器となる

 

友達の名前ひとつと引き換えに飲むカクテルは地球の色だ

 

暗がりで出会った僕らなのだから君のいない世界はきっとない

 

性愛という文脈を外れずに朝日を浴びてそのモノレール

 

君が火に燃える体と知りながらひたすら赤いお守りを買う

 

感情を静かな島へ置けば降る小雨の中で 踊りませんか

 

 

※『短歌人』2017年7月号より。