Ryo Sasagawa's Blog

笹川諒/「短歌人」所属/短歌のことを書いていこうと思ってます。

<一首評>服部真里子さんの短歌より

行くあてはないよあなたの手をとって夜更けの浄水場を思えり (服部真里子)




歌集『行け広野へと』収録。父親が一つの大きなモチーフである一連、「行け広野へと」の中の一首だが、ここでの「あなた」は父親ではなく、作中主体の恋人、もしくはそれに準ずる近しい人物であろう。


別にどこかに行こうと思って手をとったわけではなく、ふいにあなたの手に触れてみた。すこし冷たい。冷たいのだけれど、その手を通して、あなたの体全体にめぐる大いなる水へと思いを馳せる時、「夜更けの浄水場」という壮大なイメージに作中主体は支配されるのだ。


浄水場」という言葉には、手を触れることで自身が浄化されてゆくというニュアンスもあるだろう。だがそれ以前に、「浄水場」という言葉のjyo-sui-jyoという音は、浄化される水の音だけが響きわたる夜更けの浄水場を、まさに一語で完璧に体現している。音の響きによって、読者へリアリティを手渡たす、素晴らしい短歌だと思う。


われわれの体内をめぐる水、というイメージは、一時話題になった服部さんの、〈水仙と盗聴、わたしが傾くとわたしを巡るわずかなる水〉にも見られ、作者にとって、世界の重要なディテールの一つなのだろう。




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先日、法橋ひらくさんの『それはとても速くて永い』の批評会に参加したとき、初めて服部真里子さんを生で拝見してうおおおおってなりました。
イメージよりもとてもエネルギッシュな方で、頭の中でもきっとポエジーが高速回転してるんだろうな…と思いました(謎)