Ryo Sasagawa's Blog

笹川諒/「短歌人」所属/「西瓜」「ぱんたれい」同人

短歌作品

『水の聖歌隊』以降の歌、とりあえず20首

『水の聖歌隊』以降の歌、とりあえず20首 笹川諒 青白く月はこぼれて神職を選んだユリスモールのその後 リョウちゃん、と渚カヲルの声で聞くさらば全てのエヴァンゲリオン とうめいな野原にとうめいな野原を 痛むのは縫い合わすときだけ 祈りつつ言葉を探す…

「ボトルシップ」6首

ボトルシップ 笹川諒 朝露のホールデン少年はまず何をするのだろう退院後 昨日夢の中でも夢を見た人がみんな集まるBIGMAN前 原野、それから誰かが歌うサンタ・ルチアを思い言葉をはかなく尽くす 存在しない詩誌の名前が朗らかに眠るよはつなつのつま先…

「流動」8首(「短歌人」2021年8月号)

流動 笹川諒 青空にブローチの針を刺すような痛みのことをうまく言えない 自然体を意識するほど最寄り駅のサイズはいつもと違って見える 梅雨の月 水に近づく生き方と遠ざかる生き方とそのほか 十四、五年を滴らせつつやって来るから亀って夢の中ではこわい …

20代・30代会員競詠 8首(「短歌人」2022年8月号)

20代・30代会員競詠 8首 笹川諒 神に鬱きざして春のひとしれず青く塗られてゆくハーモニカ 自分の性格がわからない川沿いの桜に首を絞められながら わたしがいちばん図形だったとき、梅田でも迷うことはなかった 少しだけ歴史を信じるのもいいね旅の終わりに…

「手に花を持てば喝采」10首

手に花を持てば喝采 笹川諒 よくできたかなしみのよう雨止みを待つバス停で語るマティスは 音声が急に途切れる 耳鳴りの音はたまごっちが死ぬ音だ きっと覚えておけると思うアラベスクいつか壊れてゆく体ごと 星きれい あなたは知らないだろうけどあれなら神…

自選三十首

繁茂するイルミネーション 僕たちはカタカナの水草で寄り添う 寒くなることを確かさだと数え指一つ折り三叉路をゆく (サンサーラ)草笛として(サンサーラ)夜の砂漠を這う風として 奥歯から磨いて犬歯で現れる猫がケーキを食べた思い出 一時間九百円で働け…