Ryo Sasagawa's Blog

笹川諒/「短歌人」所属/短歌のことを書いていこうと思ってます。

短歌作品

『短歌人』2019年7月号掲載歌

『短歌人』2019年7月号 会員1欄掲載歌 笹川諒 僕たちの寿命を超えて射すひかりの中で調弦されてリュートは 君はその市場で君の語彙を買いいくぶん正しいコーラスをした それなりに生きてゆけるよ人を裁くのが人であるこの世界線 ほっとけば死ぬし竹輪を食べ…

「手に花を持てば喝采」10首

手に花を持てば喝采 笹川諒 よくできたかなしみのよう雨止みを待つバス停で語るマティスは 音声が急に途切れる 耳鳴りの音はたまごっちが死ぬ音だ きっと覚えておけると思うアラベスクいつか壊れてゆく体ごと 星きれい あなたは知らないだろうけどあれなら神…

「配色とデザイン」8首

配色とデザイン 笹川諒 好きだって思えばなぜか触れているひんやり冷えた黒い窓枠 適当なニックネームでスーパーを呼べば週末君もそう呼ぶ 渡される時計を月にするために黄色が好きという嘘をつく 短編のような五月のある夜の君とオセロをしている場面 素裸…

「世界の猫がいた百貨店」8首

世界の猫がいた百貨店 笹川諒 ほろぐらむ きれいに好きと言えなくて政治意見は持たないでいる 行きだおれたくはないから晩夏には晩夏の似合う後輩と飲む ナタデココ食べれば急に(ごめん今からしばらくは気分が落ちる) ひとつまた更地ができる ミルクティー…

「水の聖歌隊」6首

水の聖歌隊 笹川諒 ひとひとり殺せるほどの夕焼けを迎える地球 痛みませんか 複雑な思考をそっと遠ざける知らない街は知らないひかり 優しさは傷つきやすさでもあると気付いて、ずっと水の聖歌隊 クリムトの絵画、メーテル、暗がりの杏子酒(ながれるよるは…

「鯛焼きの部屋」15首

鯛焼きの部屋 笹川諒 旅のこと旅の終わりに話したい人がいる 長い旅をしている 鯛焼きを君が食べてたその日から頭のどっかに鯛焼きの部屋 国道を春から遠い方へゆく 救急車はすっと右へ曲がった 君が好き 人形劇の背景の星の座標をこっそりずらす 缶コーヒー…

「石のいくつか」10首

石のいくつか 笹川諒 洗濯をするたび縮むポロシャツが朝日でかわいてゆくよ ハレルヤ 履歴書の写真切るときこんにちは 最後の一枚これが僕だよ 繋ぎとめてくれるあなたは引力で そうか僕には海の血がある 奥歯から磨いて犬歯で現れる猫がケーキを食べた思い…

「草笛」12首

草笛 笹川諒 春の野のサブリナに会いにゆくだろう 生きているなら風も吹くから とりあえず仲良くなれるはずなのは前世が羊飼いだった人 歩くとき虹を見つける人だった 白のトレンチコート、会いたい その節はただ散ることが怖かったガラス細工のリンドウでし…

「線香と春」8首

線香と春 笹川諒 線香と春は親しいのだけれど美味しいパンを買いに行こうよ アパートは三階建てで三階に行かないままに八年過ぎる 自分から死ぬこともある生きものの一員として履く朝の靴 靴音を鳴らして歩け 春の日の鍵盤はみな許されている 花冷えのミネス…

「北限のヒマワリ」15首

北限のヒマワリ 笹川諒 かなしみはかけら かけらの僕たちは小箱を一つ互いに渡す 喩としてのあなたはいつも雨なので距離感が少しくるう六月 陽のひかり薄らぎながら遠のいて真昼 記憶が多めに消える 音楽学の「がくがく」の音が楽しいね そう言った人は死ん…

「ジュ・マペール」18首

ジュ・マペール 笹川諒 ここからはきっと見えてる知らないし誰かに訊くこともないそのビル 誕生日近くに自死が多いという統計がある 君を含んで 腹筋をペアでやるとき触れていた足はたしかに熱を帯びてた 住んでいた部屋はまだあるセックスを君が彼女として…

「その島へ」15首

その島へ 笹川諒 良い大人にはなれなくて『椿姫』読みつつ凭れている冬の駅 絹ごし豆腐三つを提げて帰る道 奪うより多く与えられたら 光るもの掬いあげてはまた戻す人だ パクチーさらりと食べて 答えのない問いばかりあり這わせれば君は鼠径部から冷えている…